「詰将棋は解いているけれど、実戦になるとなかなか相手玉を詰ませられない」
そんな人に向いているのが、『妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋辞典』です。
一般的な詰将棋本とは少し変わっていて、駒余りがあったり、俗手が出てきたり、最初から何手詰めなのか分からなかったりします。
そのため、単純に「3手詰・5手詰を解く」というよりも、実戦で相手玉を詰ませるための詰め筋を身につけることを目的にした本だと感じました。
私自身、実際に本書を1周してみました。
この記事では、実際に解いて感じた難易度やメリット、気になった点を紹介します。
『妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋辞典』はどんな本?
本書の大きな特徴は、タイトルにもある通り、「妙手」だけではなく「俗手」も含めた実戦的な詰め筋を扱っていることです。
一般的な詰将棋では、華麗な捨て駒や意外な一手など、「詰将棋らしい妙手」がテーマになることも少なくありません。
一方、本書では実戦で実際に指しそうな手も多く登場します。
さらに、
- 駒余りがある
- 俗手も登場する
- 最初から何手詰めか分からない
- 実戦に近い玉形が出てくる
といった特徴があります。
そのため、普通の詰将棋とは少し違った感覚で問題に取り組めます。
実際に1周してみた感想
私は本書を1周しました。
盤は使わず、問題を見ながら考え、分からない場合は答えを確認するというやり方です。
1問については、数分程度考えてから答えを見ることもありました。
また、「絶対に暗記しよう」と考えて取り組んだわけではありません。
それでも解いているうちに、
「この形なら、こういう詰め筋がある」
という感覚が少しずつ身についていく感じがありました。
これが本書の面白いところだと思います。
単に問題を解いて正解するだけではなく、実戦で使える詰みのパターンを覚えていくような感覚があります。
難易度はどのくらい?
本書はレベルによって難易度が上がっていきます。
私が実際に解いた感覚では、レベル1・2あたりは比較的簡単でした。
一方で、レベル3以降になると、かなり考えさせられます。
「すぐに答えが見つかる問題ばかり」という本ではありません。
そのため、詰将棋をほとんどやったことがない人がいきなり取り組むというよりは、ある程度詰将棋に慣れてから挑戦するほうが取り組みやすいと思います。
特に、3手詰や5手詰をある程度解いてきた人なら、本書の特徴をより活かせるでしょう。
普通の詰将棋とは何が違う?
本書を紹介するうえで、ここは特に重要なポイントです。
駒余りがある
一般的な詰将棋では、「駒余り」が問題になることがあります。
しかし本書では、タイトルにもある通り、駒余りもありです。
これによって、実戦で指すような詰み方を扱いやすくなっています。
実戦では、「きれいに駒を捨てて詰ませる」という場面ばかりではありません。
多少駒が余っていても、相手玉を詰ませられるならそれで十分です。
本書では、そうした実戦的な詰ませ方を考えることができます。
俗手も多い
もう一つの特徴が、俗手が登場することです。
詰将棋というと、どうしても「妙手を探すもの」というイメージがあります。
しかし実戦では、必ずしも華麗な一手が必要なわけではありません。
相手玉の逃げ道をふさいだり、普通に駒を打ち込んだりすることで詰みに持っていくこともあります。
本書では、そうした実戦的な手も問題になります。
そのため、
「詰将棋で正解するための手筋」だけではなく、「実戦で詰ませるための考え方」を学べる
というのが大きな特徴です。
何手詰めなのか最初から分からない
これも普通の詰将棋とは大きく違います。
3手詰なら「3手で詰む」と分かった状態で問題を考えます。
5手詰なら、5手の読みを前提として考えることになります。
しかし本書では、最初から何手詰めなのか分からない問題があります。
これは実戦に近い感覚です。
実戦で相手玉を攻めるとき、
「これは5手詰だから、5手読めばいい」
とはなりません。
まず、
「この玉は詰むのか?」
から考える必要があります。
その意味で、本書は通常の○手詰とは違った読みの練習になります。
実戦に近い囲いが出てくる
私が本書を実際に解いていて良いと感じたのが、実戦に近い囲いが出てくることです。
詰将棋専用の特殊な玉形だけではなく、実戦で遭遇しそうな囲いから詰みを考えます。
そのため、
「この囲いなら、こういう詰み筋があるのか」
という形で覚えやすいです。
これは実戦で相手玉を詰ませるときにも役立つと感じました。
『実戦詰め筋辞典』を読んで感じた3つのメリット
① 実戦的な詰みの力を鍛えられる
本書の最大のメリットは、やはりこれだと思います。
通常の詰将棋では、問題を解くための読みの力を鍛えることができます。
一方、本書ではそれに加えて、
「実戦でどうやって相手玉を詰ませるか」
という部分を意識できます。
実戦では、詰みがありそうだと分かっても、具体的な詰め筋が思いつかないことがあります。
本書を解いていると、そうした場面で使える詰み筋の引き出しを増やせます。
② 「この形なら詰む」というパターンを覚えられる
本書を解いていて感じたのが、詰み筋を覚えていく感覚です。
もちろん、問題を丸暗記するという意味ではありません。
さまざまな玉形を見ているうちに、
「この玉の形なら、こういう攻め方がある」
というパターンが頭に残っていきます。
これは実戦ではかなり重要です。
将棋では、毎回まったく新しい詰みを発見する必要はありません。
似たような玉形が出てきたときに、
「以前見たことがある詰み筋だ」
と気づけるだけでも、詰ませられる可能性が高くなります。
③ 3手詰・5手詰とは違った練習ができる
Shogi Studyでは、これまでにも3手詰や5手詰の棋書を紹介してきました。
たとえば、3手詰を繰り返して基本的な詰みの形を身につけることは、初段を目指すうえでも非常に有効です。
『3手詰ハンドブック 新版』レビュー|初心者から初段まで繰り返し解きたい定番詰将棋集
一方、本書はそうした「○手詰を解く」という練習とは少し方向性が違います。
3手詰・5手詰で身につけた読みを、より実戦的な形で使っていくための本
と考えると分かりやすいでしょう。
気になった点は「解説が簡素」なこと
本書にはメリットだけではなく、気になる点もあります。
それは、解説が比較的簡素なことです。
特に、複数の分岐について、
「なぜこの手が正解なのか」
を一つ一つ詳しく説明してくれるタイプの本ではありません。
そのため、
答えを見れば詰み方は分かるけれど、もっと詳しく解説してほしい
と感じる人はいると思います。
特に詰将棋に慣れていない人の場合、正解手順を見ても、
「なぜこの手を思いつかなければいけないの?」
という疑問が残る可能性があります。
ただし「自分で考える教材」としては悪くない
解説が簡素というのは一見デメリットですが、逆に考えると、自分で考える時間が長くなる本でもあります。
本書の場合、
「詳しい解説を読んで理解する」
というより、
「まず自分で詰み筋を考える」
ことが重要です。
分からなければ答えを確認し、
「そういう詰め筋があるのか」
と頭に入れていく。
このような使い方なら、解説の簡素さもそれほど気にならないでしょう。
普通の詰将棋と『実戦詰め筋辞典』の違い
ここまでの内容をまとめると、次のような違いがあります。
| 一般的な詰将棋 | 『実戦詰め筋辞典』 | |
|---|---|---|
| 手数 | ○手詰と分かることが多い | 何手詰めか分からない |
| 駒余り | 重要な要素になる | 駒余りあり |
| 手筋 | 妙手が中心の場合も | 妙手・俗手の両方 |
| 玉形 | 詰将棋特有の形もある | 実戦的な囲い |
| 主な目的 | 読み・詰みの力を鍛える | 実戦的な詰め筋を増やす |
もちろん、これは「一般的な詰将棋」と本書の傾向を比較したものです。
本書も詰将棋の一種ではありますが、実戦で使うことを強く意識した内容になっていると考えると分かりやすいでしょう。
初段を目指すなら、この本はおすすめ?
私は、初段を目指している人にもおすすめできる本だと思います。
ただし、「これを最初にやるべき」という意味ではありません。
初段を目指す段階では、まず基本的な詰みの形を身につけることが重要です。
その意味では、3手詰などを繰り返し解く勉強も非常に有効です。
初段を目指すなら詰将棋は3手詰で十分?実体験からおすすめの勉強法を解説
そのうえで、
「もう少し実戦的な詰みを勉強したい」
となったときに、本書を取り入れるのがおすすめです。
また、実戦で「詰みを見つけられない」「詰み筋がなかなか思いつかない」と感じている人にも向いています。
有段者にもおすすめできる?
有段者にも十分おすすめできます。
特に、3手詰・5手詰のような通常の詰将棋をある程度解いてきた人なら、
「何手詰めか分からない状態で実戦的な詰みを探す」
という本書ならではの練習に価値を感じられると思います。
私自身も、レベル3以降はかなり骨が折れると感じました。
そのため、
「初段向けの簡単な詰将棋本」
というより、
初段を目指す人から有段者まで、実戦的な終盤力を鍛えるために使える本
という位置づけが近いでしょう。
3手詰・5手詰の次に読むのもおすすめ
本書は、3手詰や5手詰と競合する本ではありません。
むしろ、
3手詰・5手詰 → 実戦詰め筋
という流れで考えると使いやすいと思います。
3手詰や5手詰では、
「決められた手数で詰ませる」
という練習をします。
本書では、
「この玉をどうやって詰ませるか」
を考えます。
実戦では後者の能力も必要です。
そのため、通常の詰将棋をある程度やってきた人が、実戦で詰ませる力をもう一段伸ばすための教材として使うと面白いでしょう。
寄せの勉強にもつながる
相手玉を詰ませるためには、詰将棋だけでなく、そこに至るまでの寄せも重要です。
本書は寄せ全般を解説する本ではありませんが、最終的に相手玉を詰ませるための「詰めの部分」を鍛える教材として考えることができます。
「寄せの手筋を覚えたけれど、最後の詰みが見えない」という人には、相性が良いでしょう。
『妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋辞典』がおすすめな人
本書は、特に次のような人におすすめです。
おすすめできる人
- 初段を目指している人
- 有段者
- 実戦的な終盤力を鍛えたい人
- 詰み筋の引き出しを増やしたい人
- 3手詰・5手詰とは違った問題に取り組みたい人
- 実戦で相手玉を詰ませるのが苦手な人
- 俗手を含めた実戦的な詰みを学びたい人
あまり向いていない人
一方で、
- 詰将棋をほとんどやったことがない人
- 丁寧な解説を読みながら勉強したい人
- 3手詰などの基本からじっくり学びたい人
には、まず別の詰将棋本から始めるほうがよいでしょう。
まとめ|実戦で使える「詰め筋」を増やしたいならおすすめ
『妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋辞典』は、一般的な3手詰・5手詰とは少し違ったタイプの詰将棋本です。
実際に1周してみて特に感じたのは、
- 駒余りがある
- 俗手も登場する
- 何手詰めか分からない
- 実戦に近い囲いが出てくる
- 実戦的な詰み筋を覚えていく感覚がある
という点です。
レベル1・2は比較的取り組みやすい一方、レベル3以降はかなり骨が折れます。
また、解説は簡素で、分岐などを詳しく説明してほしい人には物足りない可能性があります。
それでも、
「詰将棋の問題を解けるようになりたい」というより、「実戦で相手玉を詰ませられるようになりたい」
という人には、かなり面白い一冊だと思います。
特に、3手詰・5手詰などで基本的な詰みの力を身につけたあと、実戦的な詰め筋の引き出しを増やしたい人にはおすすめです。
初段を目指している人はもちろん、さらに上の棋力を目指す有段者にも、一度取り組んでみてほしい棋書です。

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