『振り飛車党のための受けの手筋』レビュー|初段を目指す振り飛車党におすすめ?

「相手から攻められると、どう受ければいいのか分からない」

振り飛車を指している級位者の中には、こんな悩みを持っている人も多いのではないでしょうか。

将棋の勉強というと、攻めの手筋や詰将棋、寄せなどに目が向きやすい一方で、「受け」を体系的に勉強したことがない人も少なくないと思います。

私自身も、相手から攻められたときに、持ち駒を使うのを惜しんでしまうことがありました。

「まだこの駒は使わない方がいいのではないか」と考えているうちに、相手の攻めを止められず、そのまま負けてしまうこともあります。

そんな中で読んだのが、菅井竜也八段の『振り飛車党のための受けの手筋』です。

この本を読んで特に印象に残ったのは、個々の手筋以上に、「受けではこう考える」という方針が最初から最後まで一貫していることでした。

結論から言えば、私はこの本を振り飛車党の級位者にかなりおすすめします。

問題はそれほど難しくありません。

しかし、そこで扱われている受けの基本は実戦で非常に重要で、初段を目指すなら自然にできるようになっておきたいものばかりだと感じました。

この記事では、実際に読んで感じたことをもとに、「初段を目指す振り飛車党にとって、この本にはどんな価値があるのか」をレビューします。


『振り飛車党のための受けの手筋』はどんな本?

『振り飛車党のための受けの手筋』は、その名の通り、振り飛車党が覚えておきたい受けの手筋を扱った棋書です。

問題形式は三択の次の一手形式。

相手から攻められている局面で、

「ここではどう受けるのが正しいのか?」

を考えていきます。

本書の対象は、主に初心者~級位者だと思います。

難しい読みを何手も読むというより、実戦で頻出する受けの基本を学ぶことが中心です。

そのため、受けの勉強をしたことがない人でも取り組みやすい内容になっています。

そして、この本の最大の特徴だと感じたのが、受けに対する考え方が非常に一貫していることです。


この本で一番印象に残った「受けの基本」

私が本書を読んで一番印象に残ったのは、

「駒を動かして受けるのではなく、駒を打ち付けて受ける」

という考え方です。

もちろん、どんな局面でも駒を打てばいいという意味ではありません。

しかし、相手から攻められたときには、まず持ち駒を使ってしっかり受けることを考える。

これが本書を貫いている基本方針だと感じました。

例えば、桂馬で攻められているなら銀を使って受ける。

穴熊などで攻められているなら、金や銀を打って守りを固める。

そして、できるだけもともとの囲いの形を維持する。

この考え方は非常にシンプルです。

しかし、実戦では意外とできません。

持ち駒を「節約」しすぎない

私自身、この本を読んで「これは意識したい」と思いました。

私はこれまで、受けるときに持ち駒を使うのを惜しんでしまうことがありました。

例えば、

「この銀をここで使うのはもったいない」

「まだ別の受け方があるかもしれない」

と考えてしまう。

ところが、その間に相手の攻めが続いてしまえば、持ち駒を温存した意味がありません。

むしろ、自玉が危険になってしまえば、最終的にはもっと多くの駒を使って受けなければならなくなります。

本書を読んで、

「受けでは、必要な駒を惜しまず使う」

という基本をもっと意識したいと思いました。


なぜ「駒を張り付けて受ける」ことが重要なのか

振り飛車では、囲いを作ってから戦うことが多いです。

そのため、相手から攻められたときに囲いの駒を動かしてしまうと、少しずつ自玉の守りが崩れてしまいます。

一方、必要な場所に持ち駒を打って受ければ、もともとの囲いを維持したまま相手の攻めに対応できます。

例えば、

相手の攻めが来る
↓
囲いの駒を動かして対応する
↓
囲いが崩れる
↓
さらに別の場所も攻められる

という展開になるよりも、

相手の攻めが来る
↓
持ち駒を打って受ける
↓
囲いを維持する
↓
相手の攻めが止まったら反撃する

という形を目指す。

この「受けてから反撃する」という考え方は、振り飛車党なら特に重要だと思います。


問題の難易度は?一度読めば理解できるレベル

本書の問題は、個人的にはそれほど難しくありませんでした。

三択の次の一手形式なので、問題を見て一度考えれば、解説を読んで理解できるものが多いです。

そのため、

「難しい問題を何時間も考えて読みを鍛える本」ではありません。

むしろ、

「受けの基本的な考え方と手筋を知る本」

と考えた方がいいでしょう。

これは人によっては物足りなく感じるかもしれません。

特にすでに有段者で、受けの基本が身についている人なら、

「これは知っている」

と思う問題も多いと思います。

しかし、初段を目指す級位者にとっては、このくらいの難易度にも意味があります。

なぜなら、受けの手筋は難しいことを考える能力よりも、実戦で自然に選べることの方が重要だからです。


実戦では非常に役立つ

本書について私が最も高く評価したいのは、実戦で使いやすいことです。

受けの手筋というと地味に感じるかもしれません。

しかし、相手から攻められたときに、

「ここは銀を打って受ける」

「この駒を使って守る」

「囲いの形を維持する」

と判断できるかどうかは、実戦の勝敗に直結します。

そして、これは初段を目指すなら自然にできるようになっておきたいことだと思います。

本書の問題を解けるようになること自体が目的なのではなく、

「攻められたら、まずどう受けるかを考える」

という習慣を身につけることが大切です。


初段を目指す人におすすめ?

振り飛車党の級位者ならかなりおすすめ

私はかなりおすすめします。

特に、

  • 将棋ウォーズ1級~級位者
  • 振り飛車を指している
  • 相手から攻められると困ってしまう
  • 自分の囲いがすぐに崩れてしまう
  • 受けの勉強をしたことがない
  • 持ち駒を使うのを惜しんでしまう

という人には、かなり合っていると思います。

一方で、すでに有段者で受けの基本が身についている人には、簡単に感じる可能性があります。

初段に「必須」の一冊というわけではない

ただし、

「初段を目指すなら、この本を絶対に読まなければならない」

とまでは思いません。

初段になるためには、受け以外にも、

  • 手筋
  • 詰将棋
  • 詰めろ・寄せ
  • 攻め
  • 序盤の駒組み
  • 形勢判断
  • 実戦経験

など、さまざまな能力が必要だからです。

ただ、だからといって受けの重要度が低いわけではありません。

相手から攻められるたびに自玉が危険になってしまうのであれば、初段を目指すうえで大きな弱点になります。

そういう意味で、本書は「受けという分野の基礎を固めるための一冊」として非常に価値があると思います。


この本の良かったところ

① 受けの方針が一貫している

一番良かったのはここです。

単純に100個の受けの手筋を紹介するのではなく、

「駒を惜しまず、必要なところに駒を打って受ける」

という考え方が一貫しています。

そのため、個別の手筋だけではなく、「受けるときにどう考えればいいのか」を学ぶことができます。

② 級位者でも取り組みやすい

三択の次の一手形式なので、難しい棋書が苦手な人でも取り組みやすいと思います。

受けについて一から勉強したい人に向いています。

③ 実戦でそのまま使える

本書で学ぶ手筋は、実戦で相手から攻められたときに、そのまま登場するものが多いです。

「知識として知っている」だけでなく、「次にこの形が出たら使おう」と意識しやすいのも良いところです。

④ 受けの勉強を始めるきっかけになる

将棋の勉強では、攻めや詰将棋に比べて「受け」が後回しになりがちです。

そんな人が、

「受けにも勉強すべき基本手筋がある」

と気付くきっかけになる本だと思います。


この本の気になったところ

一番気になるのは、やはり問題の難易度がそれほど高くないことです。

一度読めば理解できる問題が多いので、

「難しい受けの問題を解いて読みの力を鍛えたい」

という人には向いていません。

また、本書を一度読んだからといって、実戦で受けが自動的に上手くなるわけでもありません。

本当に重要なのは、読んだ内容を実戦で使うことです。

例えば、

「攻められたら、まず持ち駒を使って受けることを考える」

という考え方を、実戦でも意識する。

そして、実戦でできなかったら、もう一度本を読み返す。

この繰り返しが必要です。


振り飛車党以外にもおすすめ?

タイトル通り、最もおすすめなのは振り飛車党です。

美濃囲いなど、振り飛車で登場しやすい局面を中心に受けを学ぶため、振り飛車を指す人の方が内容をそのまま実戦に活かしやすいでしょう。

ただし、

  • 持ち駒を使って受ける
  • 囲いをできるだけ維持する
  • 攻めを受け止めてから反撃する

といった考え方そのものは、振り飛車だけに必要なものではありません。

そのため、居飛車党でも受けの基本的な考え方を学ぶという意味では参考になると思います。

ただ、「誰に一番おすすめか」と聞かれれば、振り飛車党の級位者です。


『振り飛車党のための受けの手筋』の効果的な勉強方法

この本は、答えを見ながら読むよりも、まず自分で考えてみるのがおすすめです。

① まず自力で次の一手を考える

三択なので、まず「自分ならどれを指すか」を考えます。

正解できなくても問題ありません。

② 正解の手筋だけでなく「なぜ」を確認する

重要なのは、

なぜ駒を打って受けるのか?

という部分です。

単純に「この問題の正解は銀打ち」と覚えるだけではなく、

「囲いを維持するために、この駒を使う」

という考え方を理解します。

③ 実戦で意識する

本を読んだ後の対局では、

「相手から攻められたら、まず持ち駒を使って受けることを考える」

と意識してみましょう。

もちろん、常に駒を打てば正解というわけではありません。

大切なのは、今まで持っていなかった「駒を打って受ける」という選択肢を持つことです。

④ 繰り返す

本書は問題が難しくないからこそ、繰り返し取り組みやすいというメリットがあります。

一度読んで終わりにするのではなく、時間を置いてもう一度解いてみる。

そして、

「この局面なら、この駒を打って受ける」

という判断が自然に出てくる状態を目指すとよいでしょう。


『将棋・ひと目の手筋』との違い

受けの手筋を勉強したい人なら、『将棋・ひと目の手筋』とどちらを読むべきか気になるかもしれません。

『将棋・ひと目の手筋』は、受けだけではなく、さまざまな手筋を幅広く学べる本です。

一方、『振り飛車党のための受けの手筋』は、受けにテーマを絞って、振り飛車で使いやすい形を学べることが特徴です。

そのため、

将棋の手筋を幅広く一から勉強したい → 『将棋・ひと目の手筋』

振り飛車党で、特に受けを勉強したい → 『振り飛車党のための受けの手筋』

という使い分けがよいと思います。

『将棋・ひと目の手筋』レビュー|初段を目指すなら最初に読みたい手筋本


受けだけでなく、攻めや寄せも勉強しよう

初段を目指すなら、受けだけを勉強すればいいわけではありません。

手筋、詰将棋、詰めろ、寄せ、囲い崩しなど、実戦で必要になるさまざまな能力をバランスよく身につける必要があります。

特に終盤では、「どう攻めるか」だけでなく、「相手から攻められたときにどう受けるか」も重要です。

私は初段を目指していた頃、寄せの勉強にも取り組みました。

『寄せの手筋200』レビュー|初段を目指す人におすすめの終盤力を鍛える一冊

また、手筋そのものをどのように勉強すればいいのかについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

初段になるために手筋はどれくらい重要?定跡より優先すべき理由を実体験から解説


まとめ|振り飛車党の級位者ならかなりおすすめ

『振り飛車党のための受けの手筋』は、振り飛車党の級位者にかなりおすすめできる棋書です。

特に良いと思ったのは、個々の受けの手筋だけではなく、

「駒を惜しまず、必要なところに駒を打って受ける」

という考え方が一貫していることです。

問題は三択の次の一手形式で、一度読めば理解できるものが多く、難易度はそれほど高くありません。

そのため、有段者にとっては物足りない可能性があります。

しかし、初段を目指している級位者にとっては、こうした基本的な受けをしっかり身につけることが重要です。

私自身も、持ち駒を節約しようとして受けに使わず、その結果負けてしまうことがありました。

本書を読んで、

「受けでは駒を惜しまない」

という基本をもっと意識したいと思いました。

難しい受けの読みを鍛える本ではありません。

しかし、そこで扱われている内容は、振り飛車党が初段を目指すなら、最終的には自然にできるようになっておきたいものばかりです。

「攻めることは少し分かってきたけれど、相手から攻められると弱い」

「受けの勉強をしたことがない」

そんな振り飛車党の級位者なら、一度読んでみる価値は十分にあると思います。

受けの基本を身につけたい振り飛車党には、かなりおすすめしたい一冊です。

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